今も昔もお坊さんは檀信徒の前で、
或いは一般大衆に説経をしてまいりました。
説経 ですから、ちゃんと聞いていただいて、
理解をして欲しいですし、興味を持って欲しい。
そのためにはまず感心を持って貰うこと、
聞きやすく話すことが条件になってま いります。
最初は淡々と話をしていましたが、
その中から色々な工夫をしてまいります。
関心を持って興味深く聞いて貰うための工夫です。

ある人は笑いの多いお話に、
ある人は語りに節を付けて、
ある人は物語風に、
今で言うギャグをふんだんに入れて 芸事のように、
そしてそれぞれが独立してきて落語・講談・講釈・あほだら経等々に 成長してきました。

この中の落語は今から300年ほど前に成立したと言われています。
ですから、落語家とお坊さんとは、話をしてみると共通点がとても多いのです。

如何 にしたら聞いてもらえるか、
会場はどういうところがいいか、
座布団に座ってするという落語のスタイルも、お坊さんから来ています。
着物・扇子も同じ、話し方、まくらの振り方等々は通じるモノがあります。

私も最初は単に聞いているだけでしたが、
噺家さんと仲良くなって話をしているうちに、多くの共通点に感銘し、
又噺家さんの方でも大変興味を示してくださったので、
今ではどっぷりと落語の湯の中につかっております。

さて、色々と勉強になったのですが、
なかでも話の間、話し方、話題、表現等の工夫 は勿論、
話を聞いていただく会場の雰囲気も大事だということです。
私たちお坊さんは本堂ならいつでも雰囲気は整っていると思っていますが、
ちゃんと聞いて貰うためには少し工夫がいるようです。

まず聞くことに集中して貰うために、
気が散らないよ うにすること、視界に入るモノを整えます。
声がしっかり聞こえていること、時には マイク等も利用します。
足が楽であること、イス席も考えます。
理解してもらいやすいようにすること、書いたモノを配ることも必要です。

これらは難しいことではなく、聞くモノの立場に立てば解ることです。
そして何よりも時間が長すぎないこと、
適当な時間、新鮮な話題と時を得た内容。
勿論伝統的な話を欠かすことはできませんが、
何百年も同じでは時代に合いません。
住職のモノの言い方で伝えることです。
変に作るよりも、住職の個性で伝えることが肝心ですね。
噺家も色々なタイプがあります。
同じ噺をしても表現や工夫に差違ががございます。
人にあった話が聴衆には一番 心地よいのではないかと思います。

ここで宣伝ですが、是非落語会に足を運んでみてください。
楽しみながら得ることが イッパイございます。
落語会でお会いできることを楽しみにしております。

合掌
常福寺 松尾光明

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